「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」とは
失踪や家出等が原因で音信不通になり、3年以上配偶者の生死が不明な場合は離婚原因の一つとなります。生きていることは確実だが、どこで何をしているのか分からない(行方不明)という場合にはこれに該当しません。この場合は「悪意の遺棄」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」を離婚原因とすることになります。
3年の起算点は最後の音信、消息のあった時からです。電話や手紙等が全くないということでしたら家を出た時であり、手紙や電話があったという場合はその最後の手紙や電話があったときからであり、勤務先や出張先を出たまま行方が分からなくなった場合等はその仕事先で最後に姿を見た時等、生存を証明するような最後の事実の時から3年の時間が経過する必要があります。
「悪意の遺棄」との違いは、悪意の遺棄の場合は勝手に家を出たらどうなるか知ったうえで身勝手な行動をとる場合ですが、3年以上の生死不明の場合は、どうしていなくなったのか原因がわからないというような、必ずしも意図的にいなくなったわけではない点等があります。
裁判で争う場合は、上記のような悪意の遺棄が証明できない場合や3年未満の生死不明の場合は、いなくなったことにより愛情を失ったとか信頼関係が壊れて夫婦関係が破綻して修復の見込みがないことを理由として申し立てることになるでしょう。
調停を経ずに裁判を起こせる
相手がどこにいるか、生きているのか死んでいるのかもわからないという場合は、協議離婚や調停離婚等で話し合うことができませんので、いきなり離婚裁判を起こすことができます。ただし裁判では相手が生死不明であることを立証しなければなりません。相手の所在ももちろんわからないのですが、裁判手続きに必要な書類送達等は公示送達という方法で行うことになります。
離婚が成立した後で、もし相手方の生存が確認されても、その離婚は無効となりません。
生死不明の証明
- 警察への捜索願の受理証明書
- 勤務先や知人等の陳述書
・・・・・職場や知人のところにも全く姿を現していないという旨の証言に変わる書類 - 事故・災害等の証明
・・・・・最後の音信の直後にその近くで事件・事故等があり、その事件・事故等に巻き込まれた可能性が高いことの証明
失踪宣告と婚姻解消
配偶者の生死が長い間分からない場合に夫婦関係を解消する方法としては、他に失踪宣告の制度があります。蒸発して行方が分からなくなったような一般的な場合は7年間、戦地や船の沈没、飛行機の墜落等特別な危難にあった場合は1年間、生死不明な状態が続けば、家庭裁判所に申してて、失踪宣告の審判を受けることができます。(民法30条)
失踪宣告が認められると生死不明者は法律的には死亡したものとみなされ、死亡によって婚姻関係が解消され残された配偶者等に相続が発生します。
ただし、失踪宣告は離婚方法ではないので、後から行方不明者の生存が確認されたような場合には、本人または利害関係人の請求により失踪宣告が取り消されることもあり、その場合には婚姻関係も復活することになります。
そのため、仮に再婚しているような場合には、その再婚は無効となるので注意が必要です。再婚の可能性がある場合は失踪宣告よりも3年以上の生死不明(離婚裁判)で離婚を進める方が無難と言えます。
離婚届は勝手に出さない
配偶者が生死不明だからといって、無断で相手の印鑑を使い勝手に離婚届を作成し、一方的に市区町村役場に提出しても、もちろんこのような離婚届は無効であり離婚は成立しません。ましてや、もし相手に訴えられれば犯罪人として処罰されることになります。
勝手に離婚届を作成することは「私文書偽造罪」となり3月以上5年以下の懲役に、偽造した離婚届を市区町村役場に提出する行為は「偽造私文書行使罪」に当たり同様に3月以上5年以下の懲役に、また戸籍係を利用して戸籍簿に不実の記載をさせる行為は「公正証書原本不実記載罪」となり5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになっております。